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コラム
支度部屋〜花道では何を?
 東京では両国国技館、そして地方場所各会場は力士達にとって戦場と呼んでいいでしょう。そして当然
相撲観戦に訪れるお客様にとっては楽しむ場所であります。壁一枚を挟み、時には人生を左右するような大一番を迎える人間と、普段の生活を忘れて楽しみに来る方達が混在するのが本場所という空間の面白いところです。それだけに一般のお客様は壁一枚隔てた支度部屋はどうなっているのか?花道では力士達は
どうしているのか?と相撲が好きな方であれば興味は尽きないところでしょう。
 特に両国国技館は花道と支度部屋は観覧席と完全に遮断されていて、お客様からは中の様子は見る事は出来ません。では他の地方場所ではどうか?花道と観覧席通路が一体のため、ある程度は出番前の
様子は見れるかもしれませんが、力士達も心得たもので本当に直前にならないと支度部屋から出てくることはありません。準備運動等は支度部屋で済ませてくるのです。
 ということで今回のコラムは普段人目に晒される機会の無い支度部屋〜花道までの力士の動きを皆様にご紹介しようと思います。なお、私の経験則からお話しするため、付き人の目から見ての表現多いかと思いますが、あらかじめご了承くださいませ。

 ○場所入り
 関取衆、若い衆問わずに自分の出番時刻から逆算して本場所に向かいます。関取衆で言えば本場所の
支度部屋で大銀杏をするかどうかで随分入り時間が変わってきます。その他テーピング作業、準備運動、
そしてもちろん精神統一などもあり、支度部屋での準備にかける時間はそれぞれです。土俵入りにさえ間に合えば入り時間に規定は無く、思い思いの時間に場所入りすることになります。しかし本場所の支度部屋の空気は息詰まるようなものがあり、早めに来てのんびりと時間が来るのを待つというのは少数派のように
思います。
 ○明け荷
 関取衆の場合、支度部屋は当日の取組に合わせて東西どちらかに明け荷を置きます。東支度部屋の奥は当然東の横綱が陣取り、あとは番付順に明け荷がずらっと並びます。と、言いたいところですが必ずしも番付順ということはございません。入り口すぐの場所は準備運動の場所が取りやすく、スペース的にも余裕があるために年数に関係なく陣取る関取が多いです。また、少し壁がせり出している部分があり、当然そこに明け荷を置くと非常に窮屈になります。明け荷の場所取りは取組が早い時間にある力士の仕事ですので、そのような場所に明け荷が置いてあると「もっといい場所取れ!」と兄弟子に怒られる事があります。また、場所取りが上手くいかないと、新十両当時の栃乃洋関のように本場所に行ってみたら、自分の明け荷が大関の横にあったなんていう笑えないエピソードが発生します。また幕内在位が長い関取衆になると若い関取衆が近づきにくいのか、他が狭いのにその関取の周りだけ妙に広いということもあります。ちなみに明け荷の中身ですが締め込み、化粧回し、さがり、湯上りタオル、テーピング類などが入っています。運搬時には結構な重量になります
 ○土俵入り
 「もうすぐ土俵入りですよ」という木が呼び出しさんによって鳴らされると、土俵入りの準備にかかります。
若い衆二人掛りでしっかりと化粧回しを締めます。土俵入り中に付き人は締め込み、包帯等を揃えておきます。この辺から付き人の表情にも緊張感が出てきます。付き人頭が下の付き人に指示を飛ばしながら準備する様はさしずめ出撃準備といった趣です。土俵入り後すぐの取組ほど忙しく準備に追われ、横綱・大関は
土俵入り直後から取組まで一時間以上あるため、まずは一息つくことになります。
 ○準備運動〜花道
 土俵入り後すぐの取組でしたら土俵入り前に、余裕があれば土俵入り後に準備運動を行います。内容・
時間はそれぞれで、とことん汗をかかないと納得しないタイプや「出番前に疲れてどうするの?」と言わん
ばかりに泰然としてるタイプ、多種多様の様子が見られます。中には付き人が気の毒に思えるような激しい
立ち合いの稽古をする関取もいます。本人は一緒に戦ってる気持ちでしょうから、大変だなどと思ってないでしょうが、前褌を取る動きをチェックする様子を見た時などは「あのパンツはゴムが伸びてもうはけないだろうな」と正直、思いました。出番四〜五番前には大銀杏も整え、花道に向かいます。この辺はテレビで見れる事もありますが、土俵に向かう直前に付き人に背中をタオルで擦らしたり(たいがい幕下で取っている付き人頭が担当することがほとんどですので、半端な力ではございません。一般の方ではとても我慢出来ないでしょう)、うがいをしたり、付き人と作戦の最終確認をしたりします。たまに気合入れのために頭突きをすることもありますが、経験上相手は関取でしかも出番前の一番殺気立っているときですから、相当痛いです。断るのはもちろん、痛い顔も出来ませんのでじっと我慢の子です。
 ○取組〜各部屋へ
 関取は普段の稽古やプレッシャー、付き人は付き人業での気苦労が報われるのは、やはり関取が取組で勝った時です。特に勝ち越しを決めて、意気揚々と引き上げる関取と笑顔で迎える付き人のシーンはご覧になられたことある方多いと思います。そして勝負の世界です、当然逆もあります。特に一瞬の変化で敗れるような相撲の後は、関取共々意気消沈です。そんな日の帰り道にファンにサインを求められて、嫌な顔一つせずに対応する関取衆を見るとつくづく「大変な商売だな」と思わされます。話を元に戻します。取組が終わると入浴です。関取が取組中に付き人の一番下の力士がパンツ一枚で入浴準備をして待ち構えます。勝っていれば関取もその若い力士をからかいつつの楽しい風呂になりますが、負けてご機嫌斜めの関取の風呂入れは、若い力士も失敗しないように必死です。風呂から上がると髷を直し、着替えを済ませて場所を後にします。明け荷は中身をきちんと整理して、しっかりと紐で縛っておきます。

 いかがでしたでしょうか?本当に簡単で申し訳かったですが、皆様の日頃の疑問に少しは答えられた
でしょうか?土俵の上では一瞬でも、その一番にかける時間は何倍にもなります。一瞬の一番にかける思いや労力が本当に多いのが相撲の特徴で、そこが最大の魅力を生み出していることは間違いないと思います。ご質問ご感想お待ちしています。
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